京都モダン建築祭

MESSAGE

メッセージ

今後長く受け継がれる
京都の新しい伝統に

笠原一人 京都モダン建築祭実行委員長

京都は、近世以前に建てられた数多くの神社仏閣や約4万件もの町家が現存する街として、世界的に知られています。しかしながらその京都が、明治期以降に造られた比較的新しい「モダン建築」の宝庫でもあり、その「モダン建築」が京都の風景の一部を形づくっていることについては、まだ十分に認識されていないように思われます。

西洋の技術をいち早く導入した琵琶湖疏水や発電所。西洋文化の象徴である国立博物館や三条通の洋風建築群。学術の先端である同志社や京都大学など高等教育機関の校舎群。そして、東山の琵琶湖疏水を活用した豊かな庭園を擁する数寄屋造りの別邸群。いずれも明治以降の近代化によって生み出された、京都ならではの豊かな建築遺産です。

「京都モダン建築祭」は、こうした近代以降の建築遺産に光を当て、その歴史や魅力を多くの方々に、そしてより深く知っていただくためのイベントです。京都の「モダン建築」がいかに豊かで個性的で、同時に時代を超えた普遍的なものであるか。それを知るには、何よりも実際の建物を訪問し、体験することから始まると考えています。その体験の積み重ねにより、「モダン建築」もまた、今後長く受け継がれる新しい京都の伝統となっていくことでしょう。

建物を所有・管理する皆さんや、それを支える地域の皆さん、行政の方々、イベントに参加される皆さんとともに、モダンな京都の魅力を育んでいきたいと思います。
「京都モダン建築祭」の実現に向けて、ぜひご協力をお願いいたします。

笠原一人

笠原一人(かさはら・かずと)

建築史家。京都工芸繊維大学助教。専攻は近代建築史、建築保存再生論。リビングヘリテージデザイン(旧住宅遺産トラスト関西)理事。DOCOMOMO Japan理事。著書に『ダッチ・リノベーション』『村野藤吾のリノベーション』『建築家 浦辺鎮太郎の仕事』『建築と都市の保存再生デザイン』『村野藤吾の建築』『関西のモダニズム建築』ほか。京都モダン建築祭実行委員長。

日本で初めての試みとなる
プロジェクト

倉方俊輔 京都モダン建築祭実行委員

京都で見るべきは、モダン建築です。
幕末に西洋建築の情報が日本に入ってきてからの優れた建物が、この街には数多くあるのです。
それはなぜでしょうか?
空襲を本格的には受けなかったから。
明治以後、いっそう文化的な日本の中心地として理解された京都には、日本を代表する建築家たちが作品を残したから。
伝統建築を大事にする人たちは、モダンなものもまた大事にして、建物が受け継がれているから。
優れた伝統があるからこそ、それに設計者が向き合い、良い蓄積を取り入れたり、あるいはそれに勝るモダンさを打ち立てようとしたから。
京都大学、京都工芸繊維大学、京都市立芸術大学など、近代の建築やデザインを代表する学問の都だから。
いずれが正しいのか、もしくは、さらに理由があるのか?
実際、豊富に残っているモダン建築を知って、巡って、考えてみませんか。
京都に住むべき理由、訪れるべき訳も、さらに腑に落ちるはず。
このプロジェクトが、日本で初めての試みとなります。
最初の同伴者になっていただけたら、とても心強いです。

倉方俊輔

倉方俊輔(くらかた・しゅんすけ)

建築史家。大阪公立大学教授。日本近現代の建築史の研究と並行して、建築の価値を社会に広く伝える活動を行っている。著書に『京都 近現代建築ものがたり』、『神戸・大阪・京都レトロ建築さんぽ』ほか多数。メディア出演に「新 美の巨人たち」「マツコの知らない世界」など。日本最大の建築公開イベント「イケフェス大阪」、東京都品川区の「オープンしなけん」などの建築公開イベントに立ち上げから参画。京都モダン建築祭実行委員。

京都市京セラ美術館「モダン建築の京都」展からはじまった

前田尚武 京都モダン建築祭実行委員

これまで私は、美術館で広く一般の市民に建築の魅力を伝え、建築ファンを増やしてゆくことを目指し、いくつかの建築展を企画してきました。来館者の感想として、展示を観て実物を訪ねたくなった、現場では知り得ないことが理解できたといった声を多く頂いてきました。昨年、京都市京セラ美術館で開催した開館一周年記念展「モダン建築の京都」(2021年9月25日〜12月26日)は、そんな声に応えようと着想した展覧会です。美術館そのものが都市のコアとなり、展覧会がコミュニティのプラットフォームになるようなキュレーションを実現し、展覧会と都市をつなぐさまざまな取り組みを通して、従来の閉じた展覧会から脱し、美術館の展示をコアに、京都市域を展示室に見立てた開かれた展覧会を試みました。

神社仏閣庭園だけではない京都における文化観光の新たな方向性を提示し、地域経済の活性化、社会課題の解決にもつながる可能性を追求した展覧会でした。

これらの取り組みは、企業・機関との連携を軸に展開し、街歩き音声ガイドアプリ開発、建物特別公開、建物探訪ツアー、レストランやカフェの特別メニュー、オンライン・コミュニティサロン、展覧会連携など、約25の旅行会社、飲食店、ホテル、観光関連団体、博物館・美術館などと連携し、これまでの展覧会にはない拡がりをみせました。この機に試みられた企画やサービスは閉幕後も継続しているものもあり、京都における新しい文化観光のコンテンツとして歩み始めています。なかでも開幕前から閉幕1ヶ月後まで約5ヶ月間実施した展覧会オフィシャル・オンラインサロンは、会員数が350人を超え、建築史家の倉方俊輔氏(大阪公立大学教授)と笠原一人氏(京都工芸繊維大学助教)と私の三人交替で二週間に一回オンライン・レクチャーを行いモデレーターの以倉敬之氏(まいまい京都代表)を交え、チャットで参加者と対話する企画です。通算10回のライブ配信のレクチャーとともに14回のリアルツアーを実施し、ハイブリッドなコミュニティの実践となりました。このコミュニティは、展覧会閉幕後に「あつまれモダン建築部」と名を改め、テーマも拡げて継続しており、この部活を核に、自治体や諸機関と共に進めている企画が「京都モダン建築祭」です。

建築最大の魅力は、個々の建築が向き合っている建築文化にあります。建築主や建築家、施工者といった創り手たちの着想・技術・思想、建物の使い手が紡いできた物語や時代背景、作品同士の時間と空間を超えたつながり、社会課題に取り組む姿勢や都市への眼差しといった建築文化の奥深さを鑑賞者と共有し、学び合うことこそが建築文化を楽しむ秘訣です。是非、この機会に京都の知られざる魅力に触れていただきたいと思います。

前田尚武

前田尚武(まえだ・なおたけ)

一級建築士/学芸員。京都市京セラ美術館企画推進ディレクター。1994年、早稲田大学大学院修了。2003年から森美術館に在籍し「建築の日本展」(2018年)、「メタボリズムの未来都市展」(2011年)などの建築展を企画。2019年より現職、「モダン建築の京都展」(2021年)を手掛けた。森美術館における一連の建築展企画で、2019年度日本建築学会文化賞受賞。京都モダン建築祭実行委員。

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